03:52 記録の確認

11月4日。前回の記録を確認する。33連。

未確認の延長案が1つある。「の」の書き出しの先端。これで35連の見込み。前回の記事の最後で、車の鍵を持って玄関に11分立ち、戻した。3時間10分前である。

鍵を取った。

持ち物を書き出した。切手を見るためのルーペ(20倍)1個。爪楊枝1箱。定規1本。ライト1個。菓子折り3個。菓子折りは前回1個で足りたが、今回は関係者が増えている。

出発前に自分の人差し指を定規で測った。幅15ミリ。缶の注意書きの「の」は前回の目視で高さ約2ミリである。第4条は指差しを要求しているが、指を近づけると目的の「の」が指の裏に消える。

太い指の横に描かれたごく小さな「の」の落書き

規定を追加した。

第7条 第4条の指差しには、爪楊枝を指の延長として用いてよい(指延長)。

爪楊枝が指かどうかの裁定に9分かかった。規定を競技の前に追加したのは今回が初めてである。競技は2回目である。

04:04 出発

高速に乗った。途中でおにぎりを2個買った。前回も2個だった。記録は取っていないが、これは更新しなくてよいと裁定した。

06:14 現地

倉庫の脇の駐車場の奥。自販機は点灯している。上段の右端の見本の缶は昨日と同じ缶だった。

ガラスの、頬の高さのところに脂の跡がある。昨日の私の頬である。連には入れない。起点が「私」なので第3条に触れる。

倉庫は閉まっている。脚立は倉庫の中にある。

車に戻った。8時まで1時間46分ある。おにぎりを2個食べた。進捗は無い。22分寝た。起きても進捗は無い。

車内から見た夜明け前の自販機とおにぎりの包装

08:05 脚立

倉庫の人が来た。昨日と同じ人である。

「また側面ですか」と言われた。「同じ側面です」と答えた。菓子折りを渡した。残り2個。脚立が出てきた。

08:20 視差帯

脚立の3段目に上がり、ルーペを出した。ここで問題が出た。

20倍のルーペは、対象から13ミリ前後でピントが合う。ガラスの外側から缶の側面まで、定規を当てて測ると38ミリあった。ガラスに押しつけても25ミリ足りない。昨日のうちに測っておく機会はあった。昨日はルーペの話をしていなかった。

スマートフォンの望遠で撮り、画面で拡大した。粗いが、「の」は見える。ゴシック体である。線の端が2か所あり、内側の上のほうから始まる端が書き出しと読める。

次に指差しである。爪楊枝の先をガラスに当て、目的の位置に重ねる。右目で重なる。左目で見るとずれる。両目で見ると爪楊枝が2本になる。ガラスと缶の間の38ミリが、見る位置によって目的地を動かす。これを視差帯と名付けた。名前を付けても動きは止まらない。

目とガラスと缶の位置関係を描いた雑な図

左目を閉じて右目だけで合わせることにした。利き目での指差しを有効とする裁定に4分。脚立の上で目を閉じて4分いたところ、右足がしびれた。

倉庫の人が通りかかって、ウインクの練習かと聞いた。違うと答えた。

08:52 更新

「の」の書き出しの先端を指差した。

35連。

前回の記録を2連上回った。記録を超えたら終わりである。脚立を降りて車に戻り、エンジンをかけた。缶コーヒーを買うのを忘れていたので降りて買った。

09:03 通告

自販機の前で倉庫の人に脚立の礼を言った。今日は早いね、と言われた。水曜だから10時ごろ補充の人が来るよ、とも言われた。

あの段はもう冬物に替えるって言ってたよ、とも言われた。

見本の缶は、今日替わる。

エンジンを切った。

車内で状況を整理した。35連の現地が57分後に消える。消えれば、この先は誰も確認できない。ここまでは「今後の延長ができなくなる」という話である。問題はもう1つある。

審判である。

前回の審判は、競技終了後の23時台に2語を削除した。今回も2語削除された場合、35連は33連になる。33連は更新ではなく同点である。審判は私だが、23時台の私が何をするかは分からない。前回も分からなかった。

さらに、撮った画像を見ていて気がついた。この「の」は印刷である。全体が一度に刷られている。ここから書き出した人はいない。書き出しの実在が怪しい。審判が見逃すとは思えない。

上積みが要る。目標を38連以上とした。ガラス越しでは無理である。扉が開いている間しか機会が無い。

09:10 位置語の棚卸し

ノートに、連の中で使える位置を表す語を書き出した。「の」の先端の周辺は小さい。小さい場所の説明には、奥、中、脇のような語が要る。

語状態使用場所
裏使用済自宅の裏
隣使用済畑の隣
脇使用済倉庫の脇
奥使用済駐車場の奥
中使用済枠の中
下部使用済側面の下部
前半使用済二行目の前半
右端使用済上段の右端
左角未使用なし
縁未使用なし
底未使用なし

第3条(同語再使用の禁止)により、使用済の語は二度と使えない。2ミリの世界で必要な語を、私は昨日、畑の周辺でほぼ使い切っていた。「隣」は畑に使った。畑の隣は倉庫で、説明なしでも見れば分かる。使わなくてもよかった、と9分間考えた。

未使用の語を探した。方角がある。東西南北は1語も使っていない。

方位磁石は持ってきていない。

09:24 磁石

上司は畑にいた。81歳。昨日と同じ場所で、同じ向きに屈んでいた。

磁石はありますかと聞いた。ある、と言って作業小屋から出してきた。畝の向きを決めるのに使っているという。傷だらけである。

畑で手のひらにのせた古い方位磁石

「倉庫の次は磁石か」と言われた。理由を聞かれたので、今回は言った。「の」を増やしに来ました。

上司は「増えるのか」と言った。増えます、と答えた。上司は土を払って立ち上がり、人に貸すものじゃないから自分で持っていくと言った。菓子折りを渡した。残り1個。

歩きながら、上司はどこかに電話をかけていた。

09:50 集合

嫁の父が来た。徒歩12分の距離である。水筒を持っていた。

「また増やしに」と言われた。はい、と答えた。菓子折りを渡した。残り0個。

自販機の前に、上司、嫁の父、倉庫の人がいる。連の12番目と10番目と、連に名前の出ない人である。連の途中の人が、連の先を見に来た。前例が無い。前例を探すほどの回数をやっていない。

3人に計画を説明した。扉が開いたら、ルーペでインクまで下りる。磁石は上司が持つ。嫁の父は手が空いている。お茶を飲んで待った。お茶は昨日と同じだった。

10:02 補充の人

ロゴの無い白いトラックが来た。補充の人が降りてきて、全員の顔を見て、何かありましたかと言った。

口頭では通らないと分かっているので、紙を出した。全文を読み上げると26秒かかった。読み上げの途中で「嫁の父です」と嫁の父が名乗り、「上司です」と上司が名乗った。

補充の人は「はあ」と言った。次に、見本は最後に替えるんで、それまでならいいですよ、と言った。触らないでください、とも言った。作業は10分ちょっとだという。

自販機の前に集まった人たちの後ろ姿と白いトラック

10:06 開扉

扉が開いた。見本の段が扉ごと手前に来た。缶の側面と私の間からガラスが無くなった。

10:06 残り12分

ルーペを当てた。13ミリ。初めて「の」にピントが合った。

高さ2ミリの字が、視野の中で握りこぶし大になっている。書き出しの端は尖っていない。先端と呼んでいたものは四角い切り口で、角が2つある。ゴシック体である。昨日の時点で分かっていたことを、今確認した。

爪楊枝を入れた。視野の中で丸太になった。

10:07 残り11分

先端の左角。36連。

10:08 残り10分

左角のインク。37連。補充の人が背後で段ボールを開けている。

10:09 残り9分

インクの縁。38連。目標に到達した。縁は直線ではない。ぎざぎざしている。

丸太が縁より太い。どこを指しているのか、指している本人に分からない。倉庫の人にカッターを借りて、爪楊枝の先を削った。1本目は折れた。2本目は削りすぎた。

脚立の踏み段に並ぶ削った爪楊枝とルーペ

10:11 残り7分

3本目。縁の一部に、インクが抜けて白くなった箇所がある。縁の欠け。39連。

無いものを指差している。第4条の「実在」に該当するかは審判に回す。審判の席は今は空いている。

手が揺れる。ルーペの視野の中で、爪楊枝の先が欠けを出たり入ったりしている。睡眠3時間10分、缶コーヒー1本。揺れ幅を定規で測る余裕は無い。

肘を持ちましょうか、と嫁の父が言った。

持ってもらった。止まった。初対面から24時間経っていない。

10:13 残り5分

欠けの北西を取りに行く。上司が磁石を持って脚立の横に来た。

針が回った。止まらない。扉と本体が鉄である。上司が1歩下がった。回る。さらに下がった。2メートル離れたところで針が落ち着き、上司はそこから腕をまっすぐ伸ばして「あっちが北」と言った。

脚立の上で、肘を持たれたまま、左目を閉じて、上司の腕の向きを缶の上に移した。

北西側に、細い線が1本ある。

肘を支えられて爪楊枝を構える棒人間と離れて方向を示す棒人間

10:14 残り4分

欠けの北西。40連。

10:15 残り3分

北西の傷。41連。「いま何個だ」と上司が2メートル先から聞いた。41、と答えた。前回より8多い、と倉庫の人が言った。前回の数字を教えた覚えはない。紙に書いてあった。

ルーペの視野に見えた黒いインクの角と欠けと傷の落書き

10:16 残り2分

傷の底。42連。あと3分です、と補充の人が言った。私の時計より1分多かった。

10:17 残り1分

底に銀色が見えた。インクの下の金属である。地金という語を、脚立の上で思いついた。

傷の底の地金。43連。

指差した。息を止めていた、と嫁の父が後で言った。

10:18 残り0分

見本替えますね、と補充の人が言った。

爪楊枝を抜いて、ルーペを外した。補充の人の手が缶をつかんで、上段の右端から外した。そこに別の缶が入った。冬物である。上段の右端の見本の缶は、この瞬間から別の缶になった。

暫定43連。

外された缶を持ったまま、補充の人が言った。これ捨てるんで、いります?

受け取った。軽い。振った。音はしない。

10:24 解散

自販機で温かい飲み物を5本買った。補充の人に断られたので、私が2本飲んだ。脚立を返した。爪楊枝の削りくずを拾った。

上司に磁石を返そうとしたら、磁石は要らないから畑を手伝えと言われた。もともと磁石は上司が持っている。第何条にも、断ってよいとは書いていない。畝の草を40分抜いた。

畝のわきに積まれた雑草と軍手

指が震えて1本目の草をつかめなかったと記録する。

13:20 サービスエリア

帰路。運転が危ないので停めた。1時間50分寝た。おにぎりは買わなかった。助手席に缶がある。シートベルトはしていない。缶の話である。

16:48 帰宅

缶を台所の棚に置いた。冷蔵庫の残りを食べた。21時まで寝た。

23:08 審査

全文を点検した。また23時台である。私は開始時刻を選んでいない。

最初に「地金」を審議した。傷の底に見えた金属は、缶そのものである。連は25番目で一度「缶」を通っている。18語かけて缶に戻ってきたことになる。第6条(足踏みの禁止)の適用例として過去最大である。過去は2語である。削除。42連。

次に「北西」。缶の側面は垂直に立っている。方位磁石は水平面の道具である。垂直の面の上で、上下の方向を北とは呼ばない。缶は円筒なので、横方向の一部に西または北の成分はある。曲面の話を31分検討した。傷は欠けの左上にあった。左上である。北西ではない。上司の腕を缶に移していた時間は約1分だった。上司に連絡するか検討して、夜なのでやめた。削除。41連。

削除後は「欠けの傷」でつながる。意味は通る。

「欠け」は残した。指差した時点で、確かに無かったからである。無いことが実在していた。裁定に12分。

最後に「書き出し」。印刷された「の」に書き出しは無い。朝の時点で分かっていた問題である。審判は見逃さなかった。これを削除すると「の」の先端になるが、「の」の端は2か所あるので、どちらの先端か定まらない。連はここで33連に戻る。

ノートを出して、自分で「の」を書いた。書き出しの位置を確かめるためである。100個書いた。

ノートにびっしり手書きされた「の」

97個は同じ位置から書き始めた。残り3個は、下から書いたらどうなるかを試した分で、試したのは私である。棄却した。100分の100として扱う。

規定を追加した。

第8条 印刷された字の書き出しは、同じ字を本人が手で書いた場合の書き始めの位置とする(本人筆順主義)。

23時51分である。規定を追加したのはまた23時台である。

「先端」と「右端」に同じ「端」がある。前回の判例により問題なし。前回20分かかった裁定が4秒で済んだ。判例の効果である。

異議を1件申し立てた。第8条によれば、私以外の人が審判をすると記録が変わりうる、という内容である。審判は私なので関係ないとして却下した。

公認41連。

00:26 台所

棚の缶を見ていた。

41連の現地に、もうこの缶は無い。自販機の上段の右端の見本の缶は、今朝から別の缶である。第4条の指差しは、今やっても別の缶を指す。競技時に実在していれば有効と裁定した。裁定に8分。誰も争っていないが、記録はしておく。

ここで気がついた。缶は今、私の台所にある。

私の自宅の台所の棚の缶の側面の下部の白地の枠の中の注意書きの二行目の前半の「の」。

数えた。13連。

親族を8人通り、電話を2回切られ、知らない人に菓子折りを渡して脚立に上った「の」に、今は3歩で着く。

そのまま底まで伸ばしても21連である。公認記録の半分で同じ場所に着く。

夜の台所の棚に置かれた無地の缶とルーペ

ルーペを当てた。今度は肘を持つ人がいないので、棚に肘をついた。傷の底に、灰色の粒が1個ある。埃である。朝は気づかなかった。

底の埃。

これがつながれば42連になる。ただし、この埃を連の中に入れるには、缶が自販機の上段の右端に無ければならない。台所では21連にしかならない。

補充の人は毎週水曜の10時ごろ来ると聞いた。来週の水曜に頼めば、10分ほど元の位置に戻してもらえるかもしれない。依頼文を紙に書いた。

「来週の水曜に見本の缶を元の段の右端に戻してください」

「の」は4個ある。連は最大で2である。

補充の人の連絡先を聞いていない。車の鍵は戻してある。玄関に立っていた時間は今日は測っていない。

記録

私の母の姉の夫の弟の妻の兄の長男の嫁の父の同僚の上司の自宅の裏の畑の隣の倉庫の脇の駐車場の奥の自販機の上段の右端の見本の缶の側面の下部の白地の枠の中の注意書きの二行目の前半の「の」の書き出しの先端の左角のインクの縁の欠けの傷の底

棒人間から畑と自販機を通り拡大の円の中の点まで続く線の図

帯区間連備考
親族帯私〜父10電話が切れる
人脈帯同僚〜上司2上司は81歳、今日も畑
地理帯自宅〜自販機9位置語をここで浪費
機内帯上段〜缶4今は別の缶
印字帯側面〜前半8頬が冷たい
微細帯「の」〜傷8全長およそ2ミリ以内
項目結果
前回の記録33連
公認記録41連
暫定記録からの削除2語(北西、地金)
同じ底まで台所から21連
開扉時間12分
1分あたりの増加0.67連(暫定は8連増で計算)
削った爪楊枝3本(折損1、削りすぎ1)
手書きの「の」100個(棄却3個)
菓子折り3個
抜いた草の時間40分
肘を持った人1人(嫁の父)
新規定2条(第7条、第8条)
異議申立て累計2件(申立人 小松、却下 小松)